カート
ユーザー
みやびを読み物
  • ホーム
  • ものづくりの初心を思い出した【みやびを四方山話】
猫イラスト
2024年1月15日

ものづくりの初心を思い出した

浦賀の千代ヶ崎砲台跡

お正月に海を見たくなり、浦賀の平根山にある千代ヶ崎砲台跡へ行ってきました。

当日は真っ青な空で、平根山から見える海は群青色に輝いていました。

群青色に輝く海の景色を堪能したことはもちろんですが、明治時代に造られたという砲台の造りの丁寧さと質の高さに驚きました。

砲台跡の写真この砲台跡は「東京湾要塞跡 猿島砲台跡 千代ヶ崎砲台跡」といい、猿島と千代ヶ崎の2カ所で2015年に国の史跡指定されました。

千代ヶ崎砲台は江戸時代後期に会津藩により台場が造られ、明治25年から28年にかけて陸軍により建設されたそうです。建設から130年近く経っており、その間には関東大震災がありました。関東大震災は東京での大火災による被害の大きさが語り伝えられているため東京の地震だと思われている方が多そうですが、実は震源は相模湾トラフで房総半島先端や神奈川県の川崎から小田原にかけた海側は震度7から6強で甚大な被害を受けました。内閣府防災情報のページの被災マップを見ると、三浦半島に位置する浦賀も震度7で住宅全潰率が30%以上の被害最高の色になっていました。しかし、激震の地にあったにもかかわらずレンガ造りの千代ヶ崎砲台には地震被害の痕が全く見受けられません。

レンガ壁にはひび割れも崩れた痕も見られません。しっかりしています。明治25年、コンピュータがない時代にどのような構造計算をやっていたのか。日本の昔からの建築技術と明治になって西欧から学んだ建築技術の融合の成果なのか。
さらに細部まで気配りが行き届いていました。例えば、風雨に曝される部分には焼成温度が高焦げ茶色の焼過煉瓦が使われていました。ちなみに、ここのレンガは小菅集治監という当時の刑務所に併設された煉瓦工場で作られたものだそうです。可愛らしい桜の花が刻印された煉瓦もありました。
兵員の待避所や宿舎や倉庫などの床はコンクリートですが外から吹き込んだ雨が床に溜まらないよう中央が少し高くなっており、部屋の隅には溝が作られて溝から側溝に流れ落ちるように工夫されていました。このように丁寧な工夫があちこちに見られました。

「神は細部に宿る」という言葉があります。その言葉を思い出しました。

新しく何かをつくる「ものづくり」は本当に大変です。
でも、諦めずに「良いもの」づくりを続けていきたいと、お正月の群青色の海を眺めながら気持ちを新たにしました。


ホームアイコンみやびをオンラインショップ